3・Ankou

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 たどり着いた先は、陰鬱な空気が立ち込める場所だった。  トンビの足は直立したまま動かない。  肩で息をしながら、目は一点を凝視したまま動かない。 「お、おい……」  街の明かりを駆け抜け、人の波から外れ、ビルとビルに挟まれた路地裏に入った。乗用車一台ギリギリ通れるだろうか程度の横幅。ネオンに光る看板はなく、湿った苔臭さが充満している。通行人一人もいない、まるで別世界に入り込んでしまったような感覚に陥る。  しかしただ一つ、動く影があった。  道の向こうを覆い隠すように蠢く黒い影。一つの巨大な存在に見える。見えるがしかし、そこには無数の闇色の瞳があった。 「なんて数だよ、おい……」  こめかみを汗が伝った。  鴉の群れがそこにあった。公園の鴉とは形が違う。それはまるで、人影を浮かび上がらせたような姿をしている。  鴉は二つの部類に分かれる。  一つは、公園の鴉のように意念の根因が決まっていて、なにかに憑いている鴉。もう一つは、意念の根因を見つけられず、人影を模し闇をさ迷う鴉。まさに今、トンビの目に映る鴉がそうだ。  根因がない鴉は、己の意念が晴れるまで誰ふり構わず人間に憑き纏う、貪欲で凶暴な奴らだ。しかしそんな鴉が群れるなど、トンビはこれまで見たことがなかった。  公園での一件で散々混乱したのに、今ここに来てさらに混乱している。 「なんだよ、こんな、こんなことって、そんなあるのか? それにこいつら……」  立ち止まった足は動こうとしなかった。
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