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「十三時間⁉ 半日以上じゃねぇかよ!」
「ええ、まあそうですね……寝坊助トンビ」
しらっと目を細める夜羽の隣で、むくりと真っ白な犬が起き上がる。
「寝ていたのに起きてしまいましたか、かわいそうに」
トンビに向けられる口調とは真逆の、穏やかな口調で犬の頭を撫でる姿に、トンビはムッと口元を歪めぼやいた。
「いやいや、ジロウは年がら年中寝てるだろ」
すると冷めた目がこちらを見た。
「は? ジロウはアナタの帰りをきちんと起きて待っているんですよ。今朝だって玄関でおすわりして待っていたじゃないですか。覚えていないんですか? 素晴らしい忠犬ですよ。まったくそれに気付いていないとは、鈍感無礼大馬鹿ど阿呆ですね」
と、つらつらと非難の言葉を並べられた。
トンビはあまりの連射攻撃で反論の言葉も出ない。
しかしこれでも、二人の関係性は主としもべ、主従の関係だ。年齢も二十一歳のトンビに対し、夜羽はぴちぴちの十代、十七歳だ。が、こんなやりとりが日常化している今日この頃である。
「あのなあ、夜羽」
「なんですか」
どうにか立場を示したいトンビだが、冷徹な眼差しが勢いを奪う。
「というか、また同じ夢を見ていたのですか? あのー……なんでしたっけ、死んだらオタマジャクシになって、蛙になるっていう……」
「カラス」
「それでいやいや叫んでいたら蛙が頭に落ちてきたんでしたっけ? うわー、そんなきったない茶髪の鳥頭に落ちる蛙もかわいそうに……」
「でえいっ、カラスだっつーの! てかお前、ひとの髪を汚いっつったな⁉ それは色か⁉ それとも髪質か⁉」
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