「あなたに微笑む」

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「じゃあ、そろそろ……」 「真希」 「はい?」 「真希、俺なら遠慮なく呼んでもいい」 「……え?」 「一人が嫌なら呼んで欲しい。傍に居たい」 「……あ、う」 「また明日。まだ寒いから風邪を引かないようにね」 真っ赤な私の頬を撫でて、新藤さんは笑った。 会社での彼からは想像できない、幼い表情だ。 私しか見られない顔かもしれないと、そう思った。 「し、新藤さん!今度また花見に行きませんか!ふ、二人だけで!」 人の気を大きくする桜の魔法にかかったつもりで、新藤さんをデートに誘う。 「是非。また連絡する」 新藤さんは微笑んで頷くと、私とつないでいた反対の手を大きく振りながら背を向けて歩き出した。 私も大きく手を振る。 だんだん手の中の熱が失われていくのが分かる。 でも。 どうかこの手の熱は消えても今の約束は消えませんように。 桜の花が散っても消えませんように。 私は夜空に向かってそう祈ると、早くスケジュールを確認したくて急いで家の中に飛び込んだ。
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