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「社長が俺に言った事の意味がよくわかりました。ただのオルゴールだろうが、持ち主にとっては形見にもなる大切な物の可能性もあるんだ、って。他人の物の価値を、他人が決めちゃダメなんだって」
気がついたら俺は涙を流していて、軽トラは事務所の前に到着していた。
「っすみませんでした。この仕事を、軽く見ていて」
「…もう良い。お前は」
「お願いします!あのオルゴール、俺に配達させてください!!」
運転席に向き直して、頭を深く下げた。
社長はダメだと言い切ったが、俺は引き下がれなかった。
「謝りたいんです。謝って、ちゃんと持ち主の元へ返してあげたいんです!お願いします!!」
長い沈黙が続いた。
両手を握りしめて答えを待っていると、頭上から大きなため息が聞こえた。
「……あの家で最後だからな」
「!ありがとうございます!!」
「ったく……」
鬱陶しそうにガシガシと頭を掻いて、窓の外を睨む社長の顔は、いつもより少し優しく見えた。
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