第1話 桜が咲いた

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「帰ってください」 「お願いします!せめて、このオルゴールだけでも受け取ってください!!」 玄関の前で、必死に頭を下げた。 でも、インターフォンから聞こえてくる音無さんの声は、冷たいものだった。 「俺の数々の無神経な態度や言葉は謝ります!あれじゃ、まるで忘れ物を押し付けに来たと文句を言われても仕方ないです。でも、…でも、今度は違うんです」 箱をギュッと抱きしめると、中身がカタリと動いた。 「このオルゴールを、草児さんの元に返してあげたいだけなんです。五年間、ずっと聞けなかったオルゴールを聞かせてあげたいんです!」 「……」 ガチャリとドアが開いた。 俺は思わず顔をあげて音無さんを見つめた。 「音無さ」 「帰ってください」 「……」 「いつまでも家の前で大声を上げられると迷惑なんです。…そのオルゴールはもう必要無いので処分してくださって結構です。それじゃ」 「そんな…待ってください!」 また閉まってしまう、そのドアに手を伸ばした時。 後ろから、大きな影が差した。 「ちょいと待ってもらえますか」
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