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「帰ってください」
「お願いします!せめて、このオルゴールだけでも受け取ってください!!」
玄関の前で、必死に頭を下げた。
でも、インターフォンから聞こえてくる音無さんの声は、冷たいものだった。
「俺の数々の無神経な態度や言葉は謝ります!あれじゃ、まるで忘れ物を押し付けに来たと文句を言われても仕方ないです。でも、…でも、今度は違うんです」
箱をギュッと抱きしめると、中身がカタリと動いた。
「このオルゴールを、草児さんの元に返してあげたいだけなんです。五年間、ずっと聞けなかったオルゴールを聞かせてあげたいんです!」
「……」
ガチャリとドアが開いた。
俺は思わず顔をあげて音無さんを見つめた。
「音無さ」
「帰ってください」
「……」
「いつまでも家の前で大声を上げられると迷惑なんです。…そのオルゴールはもう必要無いので処分してくださって結構です。それじゃ」
「そんな…待ってください!」
また閉まってしまう、そのドアに手を伸ばした時。
後ろから、大きな影が差した。
「ちょいと待ってもらえますか」
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