第1話 桜が咲いた

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渡された箱の詳細表を見ると、中身がオルゴールだとわかった。 詳細表には、忘れ物の発見場所と日付、そして写真が一緒に貼られている。 いつも思うけどこんな情報どうやって仕入れているんだろう。 「えーと、音無さんの家は……此処か」 あ、結構デカい家だ。 何度か通った事があるな。 ……このオルゴール、相当値が付く物なのかも。 ピンポーン 呼び鈴を鳴らすと、綺麗な婦人服をまとった女性が出てきた。 「…どちら様?」 「初めまして。突然の訪問失礼します。TLB事務所の桜坂と申します。本日はこちらのお宅のお忘れ物をお届けに参りました」 「……セールスなら間に合ってますので」 閉められそうになる玄関のドアを、俺は慌てて掴んだ。 このやり取りももう何十回もやってるな…。 「待ってください!セールスではありません。いきなりこんな事言われても戸惑うのはわかります。ですが、こちらを見ていただけませんか?」 詳細表と箱を見せると、女性は目を見開いて動きを止めた。 俺は通報されないよう、いつもの説明を始めた。 「TLB事務所は、長い間保管されている忘れ物を持ち主様のお宅へ配達している会社です。各個人情報については一切他用しておりませんのでご安心ください。今回のこちらの音無草児様のオルゴールは、千葉県の民宿屋のほうで発見された物で……あの?」 女性の肩がわずかに震えている事に気づいた。 「あの、音無さ」 「何よそれッ!!」 「え……」
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