第1話 桜が咲いた

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いきなり、ヒステリックに女性が叫んだ。 どこか説明不足だったのだろうか。 「あ、えと…怪しまれるのは当然の事だと思います。でも俺は」 「馬鹿にしているの!?」 「っえ……?」 馬鹿にしている……? 何の事だ。 女性は目をつり上げて俺を睨み、言葉を続けた。 「何年……、何年、経ってると思ってるのよ!!こんな、今更…警察だってろくに探してくれなかったくせにッ!!!」 「あ、あの」 「五年よ!!?五年前にお父さんが亡くなる前日に『あのオルゴールの音色をもう一度聴きたい』って言って、必死に探して……それを、今になって民宿屋に忘れていただなんて……!」 「……」 「やっと、やっと…忘れられる事が出来たのに、蒸し返してきて……今更そんな物いらないわよ!!」 「ッあの!!」 バタンッッ とっさに叫ぶも虚しく、ドアは閉ざされた。 「……」 俺はただ、呆然とそのドアを見つめている事しか出来なかった。
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