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いきなり、ヒステリックに女性が叫んだ。
どこか説明不足だったのだろうか。
「あ、えと…怪しまれるのは当然の事だと思います。でも俺は」
「馬鹿にしているの!?」
「っえ……?」
馬鹿にしている……?
何の事だ。
女性は目をつり上げて俺を睨み、言葉を続けた。
「何年……、何年、経ってると思ってるのよ!!こんな、今更…警察だってろくに探してくれなかったくせにッ!!!」
「あ、あの」
「五年よ!!?五年前にお父さんが亡くなる前日に『あのオルゴールの音色をもう一度聴きたい』って言って、必死に探して……それを、今になって民宿屋に忘れていただなんて……!」
「……」
「やっと、やっと…忘れられる事が出来たのに、蒸し返してきて……今更そんな物いらないわよ!!」
「ッあの!!」
バタンッッ
とっさに叫ぶも虚しく、ドアは閉ざされた。
「……」
俺はただ、呆然とそのドアを見つめている事しか出来なかった。
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