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って思ったのは結局オレたちだけで、あれからずっと相変わらず同じ場所にいる。オレとチカのことを知っても、誰もなにも変わらなかった。それがただ嬉しかった。
「はい、終了」
「ありがと、サク」
いきなり振り返るから、乱れた髪からチカの匂いがぶわっと攻めてきた。部屋にじんわり充満してるくせに、さらに煽らないでほしい。この匂いのおかげで、これまでどれだけ惑わされてきたんだろう。
スッと両側から伸びてきた手が顎に触れる。首筋をなぞるように動いたその指先に気を取られている隙に、唇に痺れが走った。
「ちょ、いきなりなに」
「なにって。キス」
「していいって言ってない」
「じゃあ、プレゼント、ちょうだい?」
「……チカ。あんた風邪」
「治った。もうサクには移らないから」
「そんなの言い切れないじゃん」
「キスだけ。軽くでいいから」
キラキラを放出させながらおねだりするから、チカはずるい。でもこうやって甘えられるのは気持ちがいい。独占欲は順調に育っていて、その到達点はまだ見えないんだ。怖いくらい、全部ほしい。全部ほしがってほしい。
「誕生日プレゼント、ちょうだい」
「もう……バカチカ。エロチカ」
「それすっごいエッチみたいだからやめて」
「ほんとのことじゃん」
「そうだっけ?」
とぼけた顔が近づいてくるから、微かに口を開けた。軽くでいいって言われたけど、そんなんで済むわけない。スイッチ入ったら豹変して止まれない男なんだから。しかも確信犯。もういやっていうほど知ってる。
「サク……」
いきなりグッと両肩を掴まれたと思ったら、次の瞬間にはベッドに転がっていた。チカが跳ね上げた掛布団が床に落ちる。さっきまで風呂上がりでほかほかのチカが横たわっていたシーツはあたたかくて、やっぱりオレの大好きな匂いがした。
「なぁにがキスだけだよ。ばーか」
「うん。だってサクがかわいいから悪いの」
「……チカ。ちゃんとキス、もっかいして」
「ん」
唇が触れ合う。舌先が絡まって、お互いに強く吸いついた。チカの味が全身に広がって、ビリビリと電流のようにオレの中枢を簡単にのっとってしまう。
岡部さんごめん、明日休んじゃうかも。そんなことを考えたのはほんの一瞬のことで、単純なオレはすぐになにも考えられなくなった。
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