『恋の音が聴こえない』バレンタイン☆チカ×サクSS

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 って思ったのは結局オレたちだけで、あれからずっと相変わらず同じ場所にいる。オレとチカのことを知っても、誰もなにも変わらなかった。それがただ嬉しかった。 「はい、終了」 「ありがと、サク」  いきなり振り返るから、乱れた髪からチカの匂いがぶわっと攻めてきた。部屋にじんわり充満してるくせに、さらに煽らないでほしい。この匂いのおかげで、これまでどれだけ惑わされてきたんだろう。  スッと両側から伸びてきた手が顎に触れる。首筋をなぞるように動いたその指先に気を取られている隙に、唇に痺れが走った。 「ちょ、いきなりなに」 「なにって。キス」 「していいって言ってない」 「じゃあ、プレゼント、ちょうだい?」 「……チカ。あんた風邪」 「治った。もうサクには移らないから」 「そんなの言い切れないじゃん」 「キスだけ。軽くでいいから」  キラキラを放出させながらおねだりするから、チカはずるい。でもこうやって甘えられるのは気持ちがいい。独占欲は順調に育っていて、その到達点はまだ見えないんだ。怖いくらい、全部ほしい。全部ほしがってほしい。 「誕生日プレゼント、ちょうだい」 「もう……バカチカ。エロチカ」 「それすっごいエッチみたいだからやめて」 「ほんとのことじゃん」 「そうだっけ?」  とぼけた顔が近づいてくるから、微かに口を開けた。軽くでいいって言われたけど、そんなんで済むわけない。スイッチ入ったら豹変して止まれない男なんだから。しかも確信犯。もういやっていうほど知ってる。 「サク……」  いきなりグッと両肩を掴まれたと思ったら、次の瞬間にはベッドに転がっていた。チカが跳ね上げた掛布団が床に落ちる。さっきまで風呂上がりでほかほかのチカが横たわっていたシーツはあたたかくて、やっぱりオレの大好きな匂いがした。 「なぁにがキスだけだよ。ばーか」 「うん。だってサクがかわいいから悪いの」 「……チカ。ちゃんとキス、もっかいして」 「ん」  唇が触れ合う。舌先が絡まって、お互いに強く吸いついた。チカの味が全身に広がって、ビリビリと電流のようにオレの中枢を簡単にのっとってしまう。  岡部さんごめん、明日休んじゃうかも。そんなことを考えたのはほんの一瞬のことで、単純なオレはすぐになにも考えられなくなった。
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