決意

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「片桐さん、…って誰かにチョコあげたりするの?」 二月に入ったばかりのある日、結乃は社内のエレベーターで、偶然乗り合わせた同じ総務課で同期の北山から声をかけられた。 「……は?」 結乃は思わず、その明るく屈託のない笑顔を凝視してしまう。それは、結乃が今まさに考えていたことを、言い当てるような質問だった。 「しょ、職場の人には、みんなと申し合わせてて、ちょっとしたものをあげるつもりだけど…」 「そんなんじゃなくて、本命は?」 「えっ…!?ほ、本命?」 さらに鋭いことを切り込まれて、結乃が口ごもった時のことだった。エレベーターが止まって、扉が開くと……結乃の心臓が跳び上がる。 そこに乗り込んできたのは、営業一課の精鋭たち。その中でも随一の有望株である芹沢敏生は、その清潔感あふれる端正な容姿で、女子社員の間でも一番の人気を誇っていた。 敏生はエレベーターの中に結乃の姿を見つけると、視線を定めてその眼差しを少し和ませた。結乃も胸を高鳴らせながら、その眼差しに応えるように肩をすくめて微かに口角を上げる。
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