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どうせ、敏生にチョコをあげても、迷惑に思われるだけかもしれない…。
それに、チョコをあげて告白しても、断られたら…?多分気まずくなって、今のように〝友達〟として話すこともできなくなるだろう。
そうやって、結乃は今の状況を合理化して、必死で自分自身を説得した。
ここでこうしていても、敏生はいつやって来るのか分からない。すぐに終わる仕事で、結乃に待っていてほしいと思っているのなら、メールにそうやって書いてくるはずだ。
だけど、結乃の足はそこから動かなかった。もう帰った方がいい…とは思っているのに、どうしてもそこから動けなかった。
まだ、バレンタインデーは終わっていない。この日のために、寝る間も惜しんで準備したからこそ、今日でなければ伝えられないことがある。
何よりも、八年間抱えてきた想いは、今も一瞬ごとに降り積もっていって、もうこのまま結乃の中だけに留めておけなかった。
――やっぱり、芹沢くんにチョコを渡さなきゃ…!
結乃はそう決心して、敏生を待っていることにした。
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