最終電車

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「……あっ……!」 結乃がマフラーの行方を探して立ち止まる。敏生も一緒に振り返ると、マフラーは階段の中ほどに落ちていた。 「俺、取ってくるから!」 と、敏生が一足飛びに階段を駆け上がって行くのを、結乃は階段の下で見守った。 マフラーを手に、再び敏生が下りてきたときには、すでに電車はホームに来ていて、乗車客も乗り終えていた。 「さあ、急いで!」 敏生が結乃の手を取った。 その敏生の手の温かさ……。 今、自分の身に起こっている全てが、結乃にはまるで夢のように感じられた。これが夢だったら、覚めないでほしいと思った。 そして、結乃は敏生に手を曳かれてホームを走り、閉まりかけてるドアの間に滑り込む。 二人はホッと息をつくと、お互いを見つめ合って、微笑みを交わした。 二人を乗せた電車は、今ゆっくりと動きだした……。 ― 完 ― 最後までお読みくださり、ありがとうございました。 このお話を、敏生目線で書いたものが「君とバレンタインの憂鬱」になります。 どうぞ、併せてお楽しみください(*^^*)
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