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バレンタインデーには、敏生にチョコをあげる――。そう決意した結乃だったが、実は、この決意をしたのはこれが初めてではない。
高校二年生のとき、敏生への想いを自覚した直後のバレンタインデーで、チョコをあげようとしたことがある。
けれども、その時も遠くから見つめることしかできなかった結乃は、足がすくんで敏生に近づくことさえできず、結局用意したチョコはそのままカバンの中……。家まで持って帰って、父親と二人で食べてしまった。
あの時みたいになりたくない……。
苦い思い出を胸に、結乃はその日からチョコを作る練習を始めた。仕事の合間に、課長の目を盗んでネットで作り方を調べ、家に帰ってから夜遅くまで試作を重ねた。
デパートで売っている綺麗で美味しいチョコの方がいいかも…とは思ったけれど、もし最初で最後になるのなら、心を込めて悔いのないようにしたかった。
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