社員食堂

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いつもは遠くから見つめるだけの敏生…。 隣にいられるだけでも、結乃の胸はいっぱいになってしまうのだけれど、せっかくのチャンスを無駄にしたくない。早く話しかけないと、敏生は食べ終わって席を立ってしまう。社食の中のざわめきにも急き立てられて、結乃の焦りは募った。 必死で当たり障りのない共通の話題を探し、『最近、芹沢くんちのネコちゃん元気?』と、話しかけようとした矢先、 「片桐さん、社食で食べてるなんて、珍しいね!」 空いていたテーブルの向かいに、同じ課の北山が座って声をかけてきた。 「…うん」 無視するわけにもいかず、結乃は敏生への言葉を飲み込んで返事をする。 「経理課の方から備品のチェックを頼まれてるんだけど、午後から手伝ってくれる?」 気安く頼みごとをしてくる北山だったが、結乃は隣にいる敏生のことが気になって、気が気ではない。 「どうして、私にばかり頼んでくるの?他にも後輩とかいるじゃない?」 敏生に誤解されたくないので、そうやって突き放してみるけれども、北山は屈託のない笑顔を見せて答える。
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