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「そうやって親密になれば、片桐さん、俺に本命チョコくれる気になるかなぁ…って」
「……!!」
結乃は呆れて言葉を逸するのと同時に、その会話の一部始終を敏生に聞かれているので、さらに焦ってしまう。
すると、今度は敏生の向こう側に、もう一人やってくる。営業一課の敏生の後輩の河合だった。
「芹沢先輩は、どんなチョコが好みなんですか?ガトーショコラ系とかトリュフ系とか?」
いきなりバレンタインを意識した質問が聞こえてきて、その答えが知りたい結乃の意識は、北山のことよりもそっちに釘付けになった。
食べ終えて箸を置いた敏生は、怪訝そうに河合へと視線を向けた。
「なんでお前が、そんなこと聞いてくるんだ?」
「秘書課の松本さんから、聞いてくるように頼まれたんスよー。いやー、あんな美人からチョコもらえるなんて、先輩、さすがっすねー」
その名前を聞いた途端、結乃の胸がキュッときしんで不安が立ち込めてくる。秘書課の松本さんといえば、この会社一の美人だと有名な人だ。そんな人が敏生にチョコをあげようとしているなんて…。
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