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「まつ、一緒に庭に出てみないか」
貴方はそうやって、度々一緒に庭に降りて様々なことをしましたね。ある日は庭の池に楓が映るのを二人で並んで眺めたり、またある日は、雪の降り積もった庭に娘たちと降りて散歩をしたり。梅雨の日は縁側で紫陽花で一句を詠んだり。
貴方に寄り添いながら、共に時を紡ぎ、四季を感じるその瞬間が私にはかけがえのない宝物でした。
「まつ、お前は桜のようだな」
ある春の日、貴方は私に対してそう言いましたね。
縁側で座って黙っていた貴方の姿から何か考えているのかと思っていた私は突然呟かれたその言葉にほんの少しだけ気恥ずかしくなってしまったのです。
貴方は赤面している私の様子を面白がりながら「それはどのような意味でございますか」という私の問いに答えてくれましたね。
「そのままの意味だ。桜のように可憐で美しい女子のようだなと……それと桜をみると自然と笑みがこぼれるように、お前をみると笑顔になる」
さらに赤くなった私の腕を引き寄せて満足そうに微笑んだ貴方の横顔を今でも私は春になると思い出します。
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