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前田家四男から一時は浪人のような生活に陥りながらも、私たち家族のために必死で頑張り、能登二十万石の大名へ。
そして加賀前田百万石の大名になりましたね。
「まつ、今まで不自由を強いらせてしまってすまなかった」
いつだって、私のことを思ってくれていた優しい貴方。
「まつ、今日上様からお褒めの言葉を頂いたんだ」
何かあると、真っ先に私の元に報告にくる可愛らしい貴方。
「まつ、兵が足りんのだ! どうしたら良いだろうか……」
少し吝嗇家で短気なところもある貴方。
「まつ……利長と喧嘩してしまった……」
実の息子と喧嘩すると、悄然としながら私の元にくる貴方。
「まつ、明日は共に朝日を見てみないか」
少し子供らしいところがあって、楽しみなことがあると私を必ず誘う貴方。
「まつ、お前は今日も美しいな」
時に、恥ずかしくなるような台詞を言ってくる貴方。
「まつ……まぁーつー……」
夫婦喧嘩をすると私の部屋の前で、何度も私の名を呼ぶ貴方。
「まつ! 大丈夫か体調が優れないと聞いたが……」
自身の仕事だってあるくせに私の身に何かあるとすぐ駆けつけてきてくれた貴方。
貴方が「まつ」と私の名を呼ぶ声と共に様々な貴方を思い出すのです。
そして、桜をみると貴方がこの世から去ってしまったあの日を思い出すのです。
童のようにみっともなく泣きじゃくる私の手を貴方のしわくちゃになった手が包むあの瞬間を。
最期に貴方が呟いた
「まつ、愛している」の言葉が今でも耳に残っているの。
桜をみると、どうしても貴方との思い出と貴方の最期を思い出してしまうから
──────ほら、涙で滲んで桜は見えないの。
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