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「ったく王様も簡単に言ってくれるよなぁ・・。こんなもん《冒険》の範疇を超えまくりだっつーの・・」
ようやく必要なものを詰め込んだリュックの重さに辟易しつつ、到底相手に対して面と向かっては言えない愚痴が零れ落ちる。
命令自体は簡潔だが、その成就の為には問題が山積みだ。
こちらへ戻ってきた際に閉じてしまった扉を再び開くための素材集めに始まり、言葉や文字の問題。
更には製法を習得するためには誰に師事すれば良いのか、というかそもそも簡単に教えて貰えるものなのかどうかすらわからない。
何もかもが未知。
文字通り、地図を持たずして航海に出るようなもの。
だが、ぼやきの止まらない口とは裏腹な強い気持ちに後押しされるように、俺は不敵な笑みを浮かべつつ、不確かな、しかし希望に満ちた未来に向けて力強い一歩を踏み出した。
ーーーチョコレイ。
古の伝承に記されし、世界の命運をも左右するとされる大いなる力。
その存在に魅入られし者は後を絶たず、争いの引き金となる事も少なくはなかった。
ある者は
「見果てぬ夢の結晶」
と語り、またある者は
「血と戦乱を招く魔性の力」
と呼ぶ。
だが一人の王の心を、そして世界そのものをも動かしたその力の正体は、支配や闘争の象徴などでは決してなく、他者を思いやり、慈しむ心に彩られたーー
奇跡そのものだったのかもしれない。
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