第1章

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そこに記された異世界へ渡る方法。 それに必要とされる触媒の数々は、その一つ一つが並みの冒険家では手も足も出ないような超高難易度のものばかりだ。 だがそんな事は何の障害にもならなかった。 今まで培ってきた技術や経験を総動員し、時には無謀とも言えるアタックを仕掛けて素材をかき集める。 古龍の牙、虹の雫、妖精王の鏡・・。 一つ一つ触媒が揃っていく度に湧き上がるのは、単なる喜びではなく、今まで深い霧の奥に隠されていたものが徐々に形を成していくかのような興奮と高揚感。 幻と言われる宝を見つけ、歴史に名を残したい訳ではない。 他者との競争に打ち勝ち、優越感に浸りたい訳でもない。 心の中に有るものは只、自分の知らないものを 「知りたい」 「触れてみたい」 というひどく単純な欲求のみ。 そしてその感情を糧に寝る間を惜しんで世界中を飛び回った俺は、遂に手に入れたのだ。 実に3年もの年月を費やしようやくこじ開けた、こことは異なる世界へと繋がる扉。 その先に広がる、色とりどりの光の群れ。 耳れない様々な音。 そして見たこともない建造物の森に抱かれるようにして、ひっそりと佇む《こんびに》という名の館に安置されていた神秘の秘宝――― チョコレイを。
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