第1章

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「しっかしこんなものが世界の運命をも左右するお宝とはねぇ・・。」 行きは3年、帰りは1日。 行きの苦労が馬鹿馬鹿しくなる程呆気なく元の世界に帰還した俺の口から、感嘆より困惑の方が遥かに強い独り言が漏れ落ちる。 幻の秘宝、チョコレイの入手。 その任務を果たした今、依頼主であるアストリア王・ガラハドの元へと報告に向かうのが順序としては正しい。 いや、それは全くとして間違いではないのだが、問題はその内容だ。 《チョコレイ》を手に入れる事が出来れば世界の覇権を握れると信じている王様に、 「これがお求めの品でした。あはは」 とバカ正直に献上すればどうなるか。 笑い話で済む可能性はゼロどころかマイナス圏内に突入し、最も高い可能性は問答無用で縛り首だ。 アストリア以外の国に持ち込む事も出来なくはないが、待ち受けている結末はどことも似たようなものだろう。 更に、ガラハド王の元へ参上しがたい理由がもう一つ存在する。それは・・ きょろきょろとコソ泥のように周囲を見渡し、指の間で少し形を変え始めたチョコレイに視線を落とす。 何の変哲もない薄茶色の小片だというのに、瞳は吸い寄せられたまま離せず、喉が知らぬ間にゴクリと音を立てる。 蠱惑的と言って良いほどの誘惑。 使命感や責任感を盾に抗おうとするも、反則的なまでの力で押し寄せるその力に呑み込まれ、気付けば俺はチョコレイを口の中へと放り込んでいた。
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