23人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
桃華を落ち着かせるから、と二階へあがった美百合を見送って、龍一は、
「さて――」
床を見下ろす。
さっきタンスの上から落ちた弾みで缶の蓋が開いて、中に入っていたチョコやクッキーがフローリングの床に散乱してしまっている。
「……」
砕けて粉になっているのもあるし、チョコレートなんか床にベットリだ。
このままでは足の踏み場もない。
龍一は軽くため息をつくと、掃除機を持ってきて床の掃除を始めた。
拭き掃除をしたら、今度はくすみが気になって、思わず床にワックスまでかけてしまう。
幼児がいる家なので、天然素材のワックスを使うなど、もちろん気配りも完璧。
龍一はやることにソツがない。
そして、龍一がそんな細々とした作業を終えても、美百合はまだ二階から降りて来なかった。
ちょっと音をたてて階段をのぼって、夫婦の寝室のドアを開けてみると、美百合は桃華と一緒にベッドで寝てしまっている。
このところ桃華の夜泣きがひどくて目が離せず、美百合は疲れているのだ。
このまま寝かせてやってもいいのだが、
「……」
いま桃華は、泣き疲れてぐっすり眠っている。
こんなチャンス、滅多にない。
桃華に振り回されっぱなしの毎日で、夫婦の会話もついでに営みも、最近とんとご無沙汰だった。
せめて……。
龍一はそっとベッドに忍び寄ると、美百合の頬を突っついてみる。
昼間からセックスとまでは言わないが、たまには会話の時間を持ちたいと思った。
最初のコメントを投稿しよう!