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それにしても彼はあの人に似ていた。
触れてくる指先も、はにかんだようにうつむく仕草も。
話しかけてくる時は優子の顔を真っ直ぐ見つめ、澄んだ瞳がきらきらと輝く。
そうして彼女を見つめる時限定の、嬉しい時のワンコみたいな表情も、二十年前のあの人を思わせる。
あの頃は優子も若かったから、書類を手渡される度、微かに触れてくる指にどきりとしたものだ。
どきりとして、嬉しくて恥ずかしくて・・・・・・そしてちょっと怖かった。
甘酸っぱい青春の思い出と言えばそれまでだけれど、やがてそれは苦いものとなってしまう。
そのひたむきな想いに応えず、彼女は最悪な方を選んでしまったから。
あの人は今現在、どうしているのだろうか――?
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