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時折指先が触れ合い、正社員の彼の業務指示を受けつつ、淡々と一日の仕事が終わる。
ウチにお金を入れなくなった夫の代わりに、自分の食いぶちと義母の持ち家の光熱費を稼ぐため始めたパートの仕事だが、今や空しい日々の中、優子の心の拠り所となっていた。
夫以上に、アテにしてはならない若者のおかげだと認めたくないけれど、結局そうなのだろう。
こんな枯れ果てたオバチャンの年頃になっても、誰かの好意は嬉しいものだから。
「野路ちゃん、あんなオバハン好いとんの?」
工具を片づけるのに手間取り、他のパート女性達から出遅れて更衣室に向かう途中、正社員の休憩室から男性の話し声が聞こえてきた。
野路というのは、嬉しくてたまらないワンコの表情を見せてくれる、あの若者の事だ。
からかうような話し手は、サル顔で下ネタが大好きな50がらみの先輩工員だろう。
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