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     *  建て付けの悪い扉を開けると、むっとする糞尿の匂いが鼻をかすめた。 誰も待っていない義母の持ち家、築五十年以上に見える古い木造屋。 義母は数か月前に亡くなったのにまだ彼女の匂いが、気配が色濃く残っている。 脳梗塞の末、寝たきりになった義母を、優子は独りで介護して看取ったのだ。 自分の母親が寝たきりになったのに、相変わらず夫はほとんど家に帰って来なかった。  介護と言っても、どんどんおざなりでいい加減なものになっていく。 家にほとんど帰って来ない、生活費もまともに入れなくなった夫の母親。 いい加減な息子を叱りもせずひたすら甘やかし、優子がこの家に来た当初から、気が利かない東京モンだと嫁を責め続けた義母の世話だなんて。
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