出会いは花吹雪紙吹雪

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***** 「桜も終わりだな」  あれから一カ月と少し。  新学期も始まり、僕は例の桜並木を一人歩いている。  結局、彼女と二人で桜並木を歩く約束は果たせぬまま、花は風に流れていく。  突然姿を消した彼女に対し、僕は裏切られたというよりも、彼女の言葉を鵜呑みにして、検査入院なのだから、退院してから色々知ればいいと、呑気に構えていた自分自身に腹が立った。  何も聞かされていないのではなく、何も知ろうとしなかった。  そんな自分にむかついた。  だいたい、僕は気が付いていた筈だ。  彼女の些細な表情の変化や、ちょっとした言動の違和感。  そういったものから、彼女の不安を感じ取るべきだったのだ。  ただ、自分が不安になりたくないから聞かなかっただけ。  そんな自分の弱さが情けなく、彼女が病室という小さな箱から飛び立ってしまった後になって悔やんだ。  でも。  それでもだ。  人間は悔やんだ後で、どうするかで人生が変わると思うんだ。  反省は生かせばいい。  現実に目を逸らさず、ただ、後悔しないよう、自分の心に忠実に動くこと。  それこそが僕の今できる事。
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