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掌を上に向けると、一枚の花弁が舞い降りた。
よく見ると、それは小さく千切られた紙。
「なんだこれ?」
再び視線を上げ、紙吹雪の出処を探す。
風上へと顔を向け、そして斜め上へと目を向けると、真っ白で大きな建物が見えた。
それはこの辺りで一番大きな病院。
殆どの窓は閉まっているか、空気の入れ替えの為に、小さく開いているものばかり。
けれど、たった一つ。
上の階の角部屋だけは全開となっており、その窓から一人の少女が並木道を寂しげな表情で見下ろしながら、細かく千切った紙を静かに放っていた。
外はまだ寒い。
病院の中庭で寛ぐような人もいないのだろう。
医者や看護師たちは、自分達の仕事に追われ、外の風景にまで目を配る余裕がないのだろう。
誰も気が付かない。
そして、誰も注意しない。
そんな中、僕だけが彼女の不思議な行為に気が付いた。
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