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ゴミを窓から捨てるという行為自体は許されるべきものではない。
それでも僕は大きな声を出して、彼女を注意することは無粋な行為であると感じてしまった。
憂いを含んだ瞳は飛びたっていく塵たちの姿を追う。
透けるように白い手から解き放たれて行く塵たちは、まるで自由を手にしたかのように遠くまで飛んでいくものもある。
その姿はこの世のものとは思えない神々しさと、触れればすぐにでも消えてしまいそうな儚さを合わせ持っていて、僕は彼女に声をかけられずにいた。
脆く危うい雰囲気を纏いながらも、凛とした空気を纏う不思議な少女に、ただただ目を奪われるだけだった。
どのくらいの時間、僕は突っ立ったままであっただろうか。
時間にして数分?
いや、数秒しか経っていなかったのかもしれない。
ふいに彼女の視線と僕の視線が交じり合った。
ビリリと体中に電流が走ったような感覚に僕は大きく目を見開くと、彼女はニッコリと僕に向かって微笑んだ。
それから大きく手を振って、僕に彼女の元へと来るようにジェスチャーをした。
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