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「え?」
一瞬、誰に向かって手を振っているのか分からず、辺りをキョロキョロ見渡すが、周りは冷たい風に肩を竦め、俯き加減で歩いている通行人や、颯爽と自転車を走らせている人ばかり。
彼女に気が付いている者といったら自分しかいない。
けれど僕は彼女とは初対面。
名前も知らなければ、話した事すらない。
それなのに、彼女は僕を呼んでいるのだろうか?
確認のために、彼女に向かって僕は僕自身を人差し指でさした。
満面の笑みを浮かべて大きく頷く彼女を見て、何故だか嬉しく、それでいて、どこぞの王女に見初められたかのように誇らしげな気分になった僕は、一気にその場を駆け出していた。
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