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「さっきのってさ。いったい何だったの?」
「え?」
何の脈略もなく、しかも主語すらない僕の言葉に、ポカンと口を半開きにしたまま小首を傾げる彼女。
それもそうだ。
さっきのって一体何のことを指しているのかさえ分からないのだから、答えようがない。
僕は今度は彼女にちゃんと伝わるように言い直した。
「窓から細かく千切った紙を飛ばしてたじゃん? アレって何をしていたのかな~って思ってさ」
「あ……あぁ。アレかぁ」
僅かに瞳を揺らしたものの、それはたった一瞬だけのこと。
すぐに困ったような笑みを浮かべて、頬を掻く彼女は言いにくそうに口を開いた。
「実はね。もうすぐ定期テストでしょ? うちの学校、その前に校内実力テストがあってさぁ~……担任がわざわざ病室まで結果を持ってきたのよ」
頬を膨らませる彼女の表情から、テストの結果はあまり芳しいものではなかったことが伺える。
今にも「ぷんぷん」と言葉に出しそうなほど、口を尖らせた彼女を見て、思わず吹き出した。
「ちょっと! 何笑ってるのよっ」
真っ赤な顔をして怒る彼女に、「もしかして、あの“これでもか”というぐらいに細かく千切った紙って……」と、思わずニヤけそうになる口元を引き締めて確認する。
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