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「おーや?誤解されたくない男子がいるのお~?」
思わず真顔になる。
「・・・いえ、いません」
途端にドッと3人の女友達があたしの机の周りに殺到した。美沙緒と由紀と佳奈。皆お目目がキラキラだ。
「ちょっとちょっと!?怪しいわ、今の間!!何よ何よ~!」
「チャコ!もしや思い人が出来たの!?」
「え、え、え!誰誰誰!?」
・・・凄い勢いだな、おい。あたしは正直にドン引きする。そしてゆっくりと両手を振って、否定した。
「ざんねーんでした!好きになった人がいるわけじゃないのよ。彼氏が出来たあなた達は羨ましいと思うけど」
教えない。
大体顔も覚えてない男子にもう一度会いたいなんて、頭大丈夫?と言われるに違いない。自分でもよく判らない感情なのだ、これは。
だから、教えない。
キッパリと否定したあたしに周りの興奮も少しだけ冷めた。
「・・・なーんだ。チャコに好きな人が出来たなら、あたし達いつでも協力するから言ってよ~」
美沙緒の言葉に苦笑した。
多分、言えば探してはくれるんだろう。だけどそこからどうしたいのかが自分でも判らないのに、探してなんて言えないじゃん。
「はいはい、ありがと」
そう言うに留めて、3時間目の準備をした。そして、あ、と顔を上げる。
「皆今日先に帰っててね、あたし数学準備室行かなきゃだから」
あたしの言葉に由紀が笑う。
「月曜の準備しろって言われたの?待っとくよ、そんなの」
「いやいや、寒いし、いつ終わるか判らないから」
昼ごはんまでずれ込んだらどうしようと思ってるのに、待たせるのはあたしが気にする、と言うと、3人は頷いた。
数学係という名前の使いっ走りであるあたしは、数学教師の田植先生に手伝いを頼まれている。
月曜日の朝早く来るのと土曜日の放課後残るのとどっちがいい?と聞かれたから、土曜日を選んだあたしだ。
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