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すると彼が白い息を吐きながら言った。
「こんな寒いのに立ち止まって何かしてる人がいると思って・・・そしたら、これみたことあるから」
これ、と言いながらあたしの手の上のミトンを指差す。
「――――――あ、はい。ええと・・・12月に・・・拾ってくれました、よね」
あたしは全部の動作を止めたままでゴニョゴニョと言った。
彼は白い息を吐きながら頷いた。
雪降りしきる中、立ち止まって脇で何かしている女がいるぞ、何してんだ?と覗き込んだら見たことがあるミトンだった、ってことらしい、とあたしはぼんやりした頭でも一応理解した。
丁度睫毛に触れたらしい雪のカケラを指で払って、それで、と彼は言った。
「・・・解いちゃうの、それ?」
あたしは手の平を見る。そして頷くだけにして、またするすると解き出した。
頭の中は若干パニックだった。
探していた人が見付かったけど、何の力が働いたかその人と今は二人でいて、あたしがすることを彼は静かに見ている。
雪が降って、静かな昼下がりだった。
・・・・何だろう・・・どうしたらいいんだろう・・・。
言葉も見付からず、あたしはそのまま作業を続けた。冷えた手がかじかんで細かく震える。寒さで真っ赤になっていた。
一つのミトンを解き終わって、あたしは手の平を下へ向けた。
最後の黄色の毛糸がはらりと落ちる。
同じようにそれを見ながら、隣で彼が言った。
「・・・これからどうするの、あんた」
「え、何?」
あたしは振り返らずに聞く。目はただじっと解いて地面に落ちた毛糸の固まりを見ていた。
隣の彼は、それにしても寒い、と呟くと、しゃがんであたしの足元の毛糸の固まりを両手ですくう。手袋をしておらず、素手だった。赤くなった指先で、毛糸に降りかかっていた雪を払っている。
「―――――――ふわわの人」
「は?」
耳に飛び込んできた言葉に、今度は顔を上げて彼を見た。
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