3、あたしと彼とふわわ

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 すると、前の男が言った。 「・・・あんた、美味しそうに食べるな」  あたしはちょっとホッとする。ああ、良かった。変な女だなって言われたら凹むところだった。  安心した気持ちに力を借りて、言葉を押し出した。 「だって美味しいもの。・・・あたしは真部比佐って言うんです。あんたじゃなくてさ」  彼の低い声は心地よかった。だから実際のところ、あんたであっても構わなかった。あたしを呼んでくれるなら。  だけど熱々のラーメンと温められた店内のお陰で、あたしは普段の自分を取り戻しつつあった。  だからちょっと頑張ってみる気になったのだ。  ・・・・君の、名前を教えて?  そう願いを込めて、前に座ってラーメンを食べる男子を見る。  彼は丼越しにちらりとあたしを見て、お箸を置いてから、ふーん、と言った。 「・・・大貫亮平、1年8組」 「え、1年?ホント?年上かと思ったー」  あたしが身を引いて驚くと、彼はちょっと鼻に皺を寄せてふんと鳴らした。 「どうせ老けてるんだ、判ってる。あんたも1年だろ」 「真部比佐だってば。そうだよ、あたしは1年2組。・・・どうして判るの?」  あたしの問いに彼はにやりと笑った。意地悪そうな顔をして。 「―――――幼いから」  ムカッ!あたしは口を尖らせて、それからどうせあたしは童顔ですよ、と呟いた。  ・・・8組かあ~・・・。遠いな。そりゃ今まで会わないはずだよ。移動教室でも全然関係ないクラスだったわけか。  いつの間にかラーメンはなくなっていた。そして、体も温まっていた。  言い合いをしたことで気分も解れたあたし達は、どうせだからとドリンクバーの注文をしなおし、それぞれが飲み物を取りに行って、改めて向かい合う。 「ふわわ、どうして解いたの」  大貫亮平と名乗った彼がまた聞く。あたしはホットのカフェオレ両手で包んで持ち、今朝の転んだことを詳しく話した。 「コンっと石に引っかかっちゃって。久しぶりに転んだよー」 「・・・痛いよな、冬に擦り傷作ると」 「そうそう、皮も突っ張っちゃってるしねえ」 「で、手袋にも穴が?」 「そう、泥で汚れちゃったし、もう仕方ないと思って」  一口飲んで喉を湿らす。入れた砂糖が甘くて、舌の上で広がった。
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