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「・・・ちょっと毛糸が出てたの。それをみたら、むずむずと」
「引っ張りたくなった?」
「うん」
「それは何か判るな」
でも、と彼は続ける。
「勿体ないかな、と思って。綺麗な色だったから」
あたしはカッと顔が熱くなった。・・・うわあ~、褒められちゃった・・・。どうしましょ、照れる!・・・うん?いやでも、別にあたしを褒めたんじゃないか。ちょっと動揺しすぎでしょ、あたしったら!
ごちゃごちゃと頭の中で忙しく一人で言い訳をして、落ち着こうとカフェオレを飲む。
でもやっぱり嬉しい。綺麗な色・・・そうでしょ、って自慢したかった。
「配色を褒められると嬉しいな。作ったかいがあったというもので」
あたしがそう言うと、へえ、と聞こえた。この顔はちょっと驚いてる?
「・・・自分で編むの。器用なんだな。そうか、自分で作ったものなら躊躇せずに解けるよな」
・・・あたしは不器用に見えるらしい。ちょっと凹む。
彼もすっかり温まったらしく、椅子にもたれてリラックスしているようだった。その姿は、やはりあたしと同じ高校生なんだなと突然認識した。
スッキリ頭で納得したというか。今まではやはり正体の判らない憧れやら不思議を感じて年上だろうと思っていた男子だったのが、あたしと同じなんだと思えたというか。
何だかいきなり親近感を覚えて、あたしはぽろりと言葉を零す。
「大貫君、手袋編もうか?」
「え?」
言ってからハッとして、あたしは慌ててカップを置いて両手をぶんぶんと振った。
「いや、あの!す、素手でしょう、今日も!あたしは暇だし、だから・・・」
やたらとジタバタするあたしをちょっと面白そうに見ていたけど、言葉に詰まったあたしが黙るとこう聞いた。
「・・・作ってくれるって、ミトンを?」
「え?いやいや、それは可愛いすぎるでしょ。ちゃんと5本指のついたやつだよ」
ミトン嵌めたいのか、君は?思わず見詰めて、それから想像してしまった。 無防備になったあたしはケラケラと笑う。彼も前で苦笑している。自分で想像したらしい。
「5本指のなら、良かった。ありがとう」
「え?―――――貰ってくれるの?」
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