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そしてそのまま保健室へ向かう。
校舎に入った時には凹んでいたけど、温かい保健室で優しい保健医の手当てを受けていたら、おお!謀らずも授業をサボる口実になってるわ!と気付いて少しだけテンションが回復した。
「先生、あたしついでに休んで行ってもいいですか?」
すると優しい女性の保健医、前北先生はにーっこりと大きく笑って、頷いた。
「いいわ。サボりなのは判ってるけど、怪我をした上にちょっと可哀想だから、今日は特別」
「え?」
あたしは顔を上げる。ちょっと可哀想?何が?と思って。
前北先生はその白い指であたしのミトンを撫でた。
「こけた時に怪我をしたのはこの子達も一緒ね。手編みなの?折角綺麗なのに汚れちゃったわね」
ハッとした。
膝の痛さと転んだ格好悪さに凹んでいて、あたしの両手の平を守ってくれたミトンにまで考えが及ばなかった!
あたしが机に置いたミトンの汚れと破れに先生は気付いていたらしい。ショックを受けて黙るあたしを見て、先生はまた綺麗な手でそっと手編みの破れた手袋を撫でて、優しく言った。
「休んでいきなさい。今日のついてないことは、きっとこれで全部終わりよ」
大丈夫よ、と笑った。
あたしはミトンを見てガッカリしていたけど、先生の優しさにはいと頷く。
今日のついてないことは、これで終わり。いい言葉だな。
シュンシュンとお湯が沸く音を聞きながら、ストーブの前に置いてくれた椅子にぼーっと座って、風の強い外を見ていた。
・・・あ~あ。ミトン、破れちゃった・・・。
泥で汚れてしまった黄色と緑色の毛糸を親指で撫で撫でした。
仕方ないよね。お陰で両の手のひらは守られたわけで。手の平を擦って傷をつくると日常生活の全てに支障が出るし、本当に痛い。
・・・ありがとね、君達。
自然に笑顔になった。確かに残念で、ガッカリはしていて、ちょっと眉毛は下がっていたかもしれない。
だけど、だけど。
もう一回ナデナデしておこう。うーん、よくやったぞ、君達。あたしに素敵な出会いをくれた上に寒さからも怪我からも守ってくれるとは、見上げた奴らだ!
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