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街に下りたときに買ったという干し果物と魔術師団が仕入れているハーブの中から色合いの良いものをセルジオが選び、籠に詰めた。
こんなものを持たされて女性の寮に行くなんて。
あり得ない。
セルジオは、妻が侍女をしていたそうで詳しかった。
誰か非番の侍女か、寮母が居るだろうとのこと。
自分で行けと言いたいところだ。
面倒だから、さっさと渡して帰ろう。
その時、何かが頭に触れた。
驚いて頭に手をやった拍子に、フードがめくれた。
「きゃっ、すみません、今……」
見上げると、二回の窓から身を乗り出す娘が見えた。
若い……娘。
しばらく、眩しくてくらくらしていた。きっと急に太陽をみたからだ。
「すみません、洗濯物が飛んでしまって」
声に目線を下げればさっきの娘がすぐ側に居るではないか。下りてきたのに気付かなかった。
「あ、いや。見つかったのか」
「ひとつは……見つかったんですけど、いいんです、あとでゆっくり探します。」
赤い顔で俯く。
「あの、魔術師団の方とお見受けしますが何かご用でしょうか」
「ああ、最近うちの団員に差し入れしてもらっているので、ささやかだが礼を。受け取ってくれ。」
「ええっ!そんな。こちらが勝手にしていることですから」
「皆、喜んでいる」
「こちらこそ、いつも防御膜で守っていただいて……知らずにすみませんでした。」
「そんな風に感謝されたことはないので、戸惑っている。もし何か不便があれば、言って欲しい。微力だが力になれることもあると思う」
「あの……では、ひとつ教えて頂きたいことがあるのですが」
赤くなってスカートを握りしめている。娘が小声なので、身を屈めた。
「あの、魔術師団長は、その、奥様とかお付き合いされている方とかいるんでしょうか……」
「……魔術師団長とは、今の団長のカイン・リューバーだろうか」
「はい。」
「妻はいない」
「そうですか、良かった」
「私も聞いていいだろうか」
「はい」
「君は、カイン・リューバーと面識が?」
「いえ、その、一方的に」
憧れています、という声はますます小さかった。
「名はなんという」
「リーゼロッテと申します。あの、団長には内密にお願いします。では、失礼致します」
ぴょこんと礼をして寮に戻っていく背中を見送る。
「リーゼロッテ……リーゼ……」
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