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リーゼは夕食後、カトリーヌに、呼び出された。
「チャンスよ、リーゼ」
「カトリーヌさん、このお料理は」
パンと豆のトマト煮、ハムとハーブが並んでいる。
「今日、魔術師団長が残業してるんだって。あんた、夜食届けてあげたら」
これまでリーゼは届けにいったことはなかった。
「ええっ、そんないきなり」
「大丈夫、顔見知りになった魔術師が団長の部屋までとおしてくれるから」
真っ赤になるリーゼは同性から見ても可愛らしい。
「魔術師団長、これでこの子に惚れないなんて人間としてどうかと思うわ」
そんなことを言われているとは知らず。
団長は執務室でだらけていた。
残業は終わった。
正確には、普段は数人で行っている作業を魔力の量で強引に進めたため、歪みが出ないか待機しているのであった。
しかも空腹だった。
空腹のあまり食堂に行こうという気力もないくらい、脳に糖分が足りなかった。
いつもなら、セルジオが何か食べ物を用意するか、無理やり休憩させている。
ノックの音がしたが、魔術で鍵をあけて扉を開いた。
机に突っ伏したまま、意識が遠退いた。
「団長、団長、……カイン様……」
紅茶の香りと優しい声。
目覚めると、恋しい人がいる。
「……夢か」
手を握ると赤くなる。すりすり。
更に赤くなる。頬に当てれば手を引っ込めようとする。
許さない。
すべすべすべすべ。
なんて良くできた夢だ
「あの、やめてくださいませ」
「あ、君は……」
「お夜食をお持ちしました、リーゼロッテと申します」
「リーゼ……食べて良いか」
ドアの向こうから数人の魔術師がなだれ込んできた。
「団長、それはまずいっす!」
「いやまずくないですけど、美味しそうですけど、美味しすぎやしませんか」
「たくさん持ってきましたので、皆さんもどうぞ」
リーゼが微笑みかけるとセルジオが扉を閉めた。
「ここで事件は困りますので、団員は残りで充分ですから」
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