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「今日は特別な日だ」
副団長が告げる。魔術師達は真剣な面持ちである。
まだ明星の残る空のもと、彼らは一人、また一人と出仕してきたのだ。緊張で早く目覚めたとみえる。
「任務の遂行こそが各自の生活に安寧を取り戻す近道だと理解してくれ」
「はい」
「持ち場によっては辛いだろう」
「はい」
「身悶えするような羞恥を耐えてもらうかもしれない」
「はい」
「それでも、じっと耐えて欲しい。それこそが、団長……と我らの命のためなのだから」
「はい、喜んでーーー!!」
誰からともなく、肩を組んだ。円陣を組む。
「今日は特別な日だ」
「今日は特別な日だ」
「今日は特別な、日だぁぁぁ!」
外で鳥が飛び立った。
普段はこんな大声は魔術師団の棟からは聞こえないのだ。
コミュニケーション能力の低いことにかけては定評のある魔術師達は変人や引きこもりが多いのだが、今日ばかりは心を一つにしていた。
団長の乱心を止め、魔力の暴走を食い止めなくてはこの国は崩壊する。
団長のみが王家を守れるのだから……。
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