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魔術師たちは、疲れはてていた。
「リーゼロッテ嬢を守る会(団長からも)」
というものが結成され、彼女の生活を守っていた。
団長の魔力が暴走する度に、後始末に追われる。
リーゼが笑えば花が咲き、
リーゼが鳴けば雷鳴が轟く。
「もう、本当に嫁になってくれないと俺たちが過労死するか国が滅びるか……」
「いっそ皆で土下座しますか?団長の正体ばらして……」
当の本人である団長は、顔を晒してリーゼと会っているのだ。
といっても挨拶程度だが。
憧れの団長は渋い大人の男だと思っているリーゼは、暇そうにフラフラ現れる青年カイを新人魔術師だと思っていた。
「あら、こんにちはカイさん。またサボってるんですか」
「結界の見回りをしているだけですよ。サボってるなんて人聞きの悪い」
「団長さんに怒られちゃいますよ」
「怒る男は嫌いですか?」
「そうですねえ……普段から怒りっぽい人は嫌ですけど。団長はお仕事ですから、厳しい態度も素敵だなって思います」
頬を染めて、リーゼが言うと、背中を向けて駆け出すカイが小さく見えた。
「ありがとうリーゼさん!」
「カイさん、転移したのかしら。走るの早いのね……なぜお礼を言うのかしら。はっ、そういう性癖の方がいるとカトリーヌさんが言ってたような……団長に叱られて喜んでるのかしら」
カイ=カインは、魔術師団に帰っても顔がにやけきっていた。
ああ可愛い
目の前で本人を誉めて赤くなるリーゼ可愛い
可愛い可愛い可愛い可愛い
「よし、これからも団員には厳しくいこう!」
「はい?何ですかいきなり!」
「で、進展してるような気になってるとこ悪いですけど、その悪趣味なプレイ、絶対に嫌われますからね!『やだ、そんな人だとオモワナカッター、サイテー!』ってバッサリですからね、バッサリ。
傷の少ないうちに自分で正体ばらして……」
「セルジオさん、ダメです。団長が……」
「そうだよな……浮かれてた……はは」
城中の湿度が上がった
「大変です、カビとキノコが大量発生して……」
魔術師たちが叫んだ
「こんな生活、もう嫌だああああ!」
という訳で、リーゼ嬢を団長の嫁にするべく、次の舞踏会の日に決行することとなった。
翌日は城勤めの者も休みがもらえるのだ。
「どうか、その日にリーゼ嬢が団長の想いを受け止めてくれますように……!」
神頼みしかない。
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