13人が本棚に入れています
本棚に追加
「だから、私たちが言ってるのは『いかにして』『確実に』『良縁を』モノにするかなのよ!いい?リーゼ!!」
王宮に勤める侍女仲間と夜更かししてます。
お菓子や果実酒を持ち寄って小さなテーブルが華やかです。憧れの男性や城下の話をとりとめもなくするのが恒例だったのに。
先輩のカトリーヌさんに叱られてしまいました。
「リーゼ、カトリーヌも本気で怒ってないのよ。ただ、今夜は宴に向けての作戦会議だから」
別の先輩が慰めてくださいました。
王宮で働く者にとっては宴の直前までが激務なので、あとには労いとして残った 食材や酒が与えられる。恋人達にとっては逢瀬の時間だ。
「私たちみたいな下っぱ貴族は親の決めた婚約者がアタリとは限らないのよ。だから今の間に自由恋愛で捕まえないと。それなのにリーゼは相変わらず魔術師団長のことばっかり。いい加減に現実的に恋人を作ることを考えなさい」
「現実的に、ですか」
「だって、団長の顔を誰もちゃんと見たこと無いんでしょう。いつもフード被ってて、素顔どころか年齢もわからないじゃない。確かにミステリアスで気になるけど」
「でも、声が素敵なんです!」
「アンタ声だけじゃ孕めないのよ。男は定職と健康体よ。それが結婚の条件」
カトリーヌさん、瓶をドンと置きました。
今夜は風が強く、窓の外は荒れている。
カトリーヌさんも荒れている。
「前は、結婚するなら美形で騎士団って言ってたじゃないですか」
「前は前。騎士団の奴ってモテるから調子乗ってんのよ。気前が良いし仲間に奢りたがるしプレゼントもいかにも女慣れしてて、付き合いで娼館行ってさ、行くのは別にいいのよ。ただ仕事だからさっていちいち言い訳するのが嫌だって……
ある友達に聞いてね」
こういう場合の『友達』って経験談ですよね。
誰もつっこまない。
「その点、魔術師団は良いらしいのよ。話は下手だし、デートも退屈だし私服も酷いけど、浮気しそうにないし。くれるプレゼントも手作りで地味なんだけど、安眠枕とかハンドクリームとかカロリー半分にする護符とか、超効くのよ!
……って友達が言ってた」
はい。カトリーヌさん安眠のお陰で肌ツヤツヤですもんね。
「というわけで、アタシ魔術師狙うから。リーゼも、本気で団長狙うならさっさと玉砕してきな」
枯れ枝が風に飛ばされたのか窓にコツンと何度か当たっている。
最初のコメントを投稿しよう!