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ビュビュビュビューーーー
ガツッ
ひときわ強い風にぐらりと部屋が揺れた。
「なに、今の」
窓に駆け寄るが、誰も開けられない。
窓枠が歪んだのかもしれない。
その時、ノックの音が。
「ちょっといいかい?」
寮母のドーラさんだ。
「今日もお楽しみなんだね。
さっきの音について、魔術師団から通達があってね」
カトリーヌさんは背後に酒瓶を隠して笑顔を貼り付けた。
「今夜みたいな荒れ模様の日は魔術師団が防御膜を張ってるんだってさ。各建物に。で、さっきのは膜が破れたらしい。で、その綻びに風が集中しちまったんだとさ。建物に傷はないけど念のために窓は封じてます、だってさ。」
「それは、いつも守られてたってこと……?」
カトリーヌさんの顔が上気する。
「やだ、やっぱり魔術師サイコーじゃない!地味だけど!」
他の先輩侍女にも興奮は伝染する。
「……乙女、乙女の顔しちゃってるわよ!カトリーヌが本気になった!」
「やるな、魔術師共。地味だけど!」
普段は恋愛話に入らないクールなタイプの先輩も加わって、ますます魔術師の株が上がる。
「はいはい、あんた達、明日は休みだから羽伸ばしてるのはわかるけどさ。休日こそゆっくりするんだよ?若いからって甘くみてると疲労は蓄積するんだから。」
ドーラさん、酒瓶からラッパ飲み。
「ああああ一番高い酒から」
「さすが酒豪」
「今度、門限破ったときには目をつぶっててやるからさ」
話のわかる寮母さん素敵。
「ドーラさん!明日、厨房借りても良いですか……?」
「あ?いいけど。」
「お菓子を作って、魔術師団にお礼として持っていくわ!」
カトリーヌさんが目をキラッキラッさせて叫んだ。
酔って潤んでるわけではない。
高い酒を飲まれて泣いているのでもない。
「ダメだ」
ドーラさん、眉間にシワを刻んだ。
「汚しませんから、お願いします」
「ドーラさん、カトリーヌ本気だから、協力してやって」
「……あんたの本気はその程度かい?」
その日、寮の灯りは消えなかった。
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