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机の前の置時計に目をやるともうすぐで6時半。
3月15日。
徐々に日は長くなってきている感覚はあるが今時分はもうすっかり暮れている。
部屋も冷えてきた。
塾のテキストも区切りのいいところまでやれた。1階のリビングの暖房をつけておこう。もうすぐ奏人と恵実らが来てもいい頃だ。
母からは今夜も遅くなりそうだとLINEが来ていた。
恵実からはお惣菜を持っていくからごはんを焚いておくようにとLINEが。奏人の分もあるそうだ。
キッチンからはごはんが炊き上がる直前の湯気が香ってくる。
ピンポーン
ドアを開けるとトートバックを下げた恵実と二人の弟妹。
「しんちゃーん!」
脚に絡みついてくるのは末妹の彩花(あやか)。伸が大好きだ。
「いらっしゃい」
頭をなでると、両足を抱きしめる腕に力を込める。
「「おじゃましまーす」」
恵実と恵一郎が脇を通る。
伸が彩花の手を引いてキッチンに行くと恵実は既にトートバックからタッパーを取り出していた。
手鍋をコンロにかける恵一郎。
そこに恵実がタッパーからのシチューを移す。お店で評判の100時間ビーフシチュー。
おじさんが100時間かけて作り上げるデミグラスの味は深い。
もう一つの大きなタッパーには挽肉がたっぷり詰まった大振りのロールキャベツ。小さい頃からの伸の大好物だ。
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