第1幕

9/40
前へ
/320ページ
次へ
「そんな急に来てすぐに出来るわけないでしょ。それに、今はトライアを出そうとしてるんだから」 文句を言う陽だが、他の整備士が何人か近付いてきた。 「おう、何だトイレ当番?ライナーを出せってか?」 その内の一人、橘幹雄(タチバナ ミキオ)が翔をからかいながら話し掛けてくる。 「うるせーよ、サボリ担当。こちとら真面目に仕事しに来てるんだよ。なぁ、頼むから出してくれよ」 軽口を言い返して翔は橘に頼み込む。 「オレにそんな権限あると思うか?まぁ、出せるのは出せるらしいけどな」 と、橘は振り返って出撃準備の具合を説明した。 どうやらどちらも出せるようになっているようだ。 「オイコラァ!橘ァ!サボってんじゃないわよォ!」 すると、ドスの利いたオッサンの声が彼方から聞こえてきた。 二つある整備班の内の一つ、B班の班長である小前田太朗(オマエダ タロウ)である。 女性的な口調と動作だが、れっきとした漢である。 サボリ魔の橘もB班なので班長に目を付けられているのだ。 「ヤッベ。あー、班長!翔が何かね、ライナー出してほしいって言ってんすよ!それ聞いてたんでサボりじゃねぇっス!」 保身の為に翔をダシにして言い訳する橘。 小前田も腕を組んで睨みを利かせたままじっと翔を見る。 「翔ちゃんホント!!?」 今、橘の命は翔の返答に掛かっている。 果たして、翔の返答は。
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加