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「そんな急に来てすぐに出来るわけないでしょ。それに、今はトライアを出そうとしてるんだから」
文句を言う陽だが、他の整備士が何人か近付いてきた。
「おう、何だトイレ当番?ライナーを出せってか?」
その内の一人、橘幹雄(タチバナ ミキオ)が翔をからかいながら話し掛けてくる。
「うるせーよ、サボリ担当。こちとら真面目に仕事しに来てるんだよ。なぁ、頼むから出してくれよ」
軽口を言い返して翔は橘に頼み込む。
「オレにそんな権限あると思うか?まぁ、出せるのは出せるらしいけどな」
と、橘は振り返って出撃準備の具合を説明した。
どうやらどちらも出せるようになっているようだ。
「オイコラァ!橘ァ!サボってんじゃないわよォ!」
すると、ドスの利いたオッサンの声が彼方から聞こえてきた。
二つある整備班の内の一つ、B班の班長である小前田太朗(オマエダ タロウ)である。
女性的な口調と動作だが、れっきとした漢である。
サボリ魔の橘もB班なので班長に目を付けられているのだ。
「ヤッベ。あー、班長!翔が何かね、ライナー出してほしいって言ってんすよ!それ聞いてたんでサボりじゃねぇっス!」
保身の為に翔をダシにして言い訳する橘。
小前田も腕を組んで睨みを利かせたままじっと翔を見る。
「翔ちゃんホント!!?」
今、橘の命は翔の返答に掛かっている。
果たして、翔の返答は。
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