苦いけど、甘いモノ

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これなら大丈夫…うん、きっと大丈夫… 去年の暮れに言った言葉が守られていることを確かめた私は、 「そう邪険に扱うことないじゃない。嫌がらせでバレンタインにチョコを贈る女の子なんて、そんな沢山いる訳じゃないんだから…」 紙袋の口を広げ、中身を見ながらガサゴソと漁り、 「まぁ、私は嫌がらせでなんてこんなのあげないわよ。ハイ、コレ。ハッピーバレンタイン、なんちゃって」 今日の朝ラッピングしたモノ…バレンタインチョコを軽くおどけた調子で差し出した。ホントはちょっと緊張してたけど、それを隠すためにわざとこんな感じで言ってみたの。 上手く隠せたかな…? そんなことを考えている私を見てどう思ったのか、彼は途端に仏頂面になり、 「ケッ、何がハッピーバレンタインだよ。俺にとっちゃあアンハッピーな一日だってのに…」 ボヤき気味に言いつつも、私が差し出したチョコを受け取る。フゥ、どうやらバレてないみたい。 でも、良かった…無事に受け取ってもらえて。コレで受け取ってくれなかったら、私、その場から逃げ出しちゃってたかも。 …なんてことは口が裂けても言えない私は、 「そう思うなら、来年からは予防線を張っておいた方がいいわよ。『俺、チョコ嫌いなんだ』って女の子に言うところ、私は見たことも聞いたこともないからね」 いつものように彼へ言葉を向ける。 これは年末に『チョコ嫌いなんだ』って聞いた時からずっと思ってたこと。 簡単な言葉なんだけど、この一言があれば彼も嫌いなチョコを見なくても済むし、手作りチョコを捨てられて泣く女子もいなくなるはずなの。 一石二鳥、一挙両得、ってな感じで簡単に片がつくのに彼はそうしなかったのは、やっぱりバレンタインがどんな日か知らなかったからね。全く、知らないって怖いわね、ホント。 だけど、彼はバレンタインが何なのか、その日に渡されるチョコがどんな意味を持つのかを知った。 となれば、どうすれば嫌いなチョコを見なくて済むのかも容易に想像できるはずなの。私がいちいち言わなくても、ね… それでも、彼はバレンタインの前日までにこの一言を口にしたとこを見てないし、聞いていない。一体何故か…
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