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えっと、何を考えてたんだっけ…?
朱兎の心境について傾けていた思考回路に一応のケリをつけたあと、私が真っ先に思ったのはそんなことだった。全く、私ったら何をしているのかしらね。
でも、朱兎のことは他人事じゃなかったし、そっちの方に意識を向けてもおかしくなかったから、仕方ないって言えば仕方ないわよね。
忘れちゃったなら、まずはこうなるまでの流れを順番に思い返していけばいい。そうしたら、私は自分が何をしようとしたのかが分かるはず。
…
……
そうそう、『どうすれば彼にバレンタインを好きになってもらえるか』だったわ。チョコを受け取っても嫌な気持ちにならないか…それを考えてたのよね、テヘペロ♪
…
イヤだ、自分でもちょっと気持ち悪くなっちゃったww 私らしくないし、慣れないモノは使うモノじゃないわね。
っと、いけないいけない。こんなこと考えてる場合じゃないわ。えっと、うんと…
私は考えた。
…そうだ。これなら行けるかも…
私の頭に閃くモノがあった。
幸いなことに、私がこのチョコを作った理由と方向性が一致している。これなら彼の考え方を変えることができるかもしれない。
そう思った私は、
「トキくん【私は彼のことを『時々』こう呼ぶ】、チョコは嫌いだけど喧伝するのは気が乗らないのよね?
なら、嫌いなモノを克服して好きなモノにしたらいいんじゃないかな…?」
と彼に言う。
「オイオイ、いきなり何を言うんだよ? ったく、少しは話の流れを読めよな。
それに、俺の嫌い云々をそんな簡単に言ってくれるなよ。チョコなんざ甘ったるいモン、すぐに好きになれる訳がねぇっての」
「あら、やってみないと分からないわよ? 試しに、私があげたチョコを食べてみれば?」
「ミヤのチョコを、か…? まぁ、バレンタインのチョコは捨てねぇって約束したけどよ…何でミヤのを食べなきゃならんのか分からねぇ」
「まぁまぁ、そう言わないで食べる食べる。食べてマズかったら、いくらでも文句を聞いてあげるわよ」
「ったく、食べりゃあいいんだろ、食べりゃあ。そん代わし、後で後悔すんなよ…?」
私に促されるままに、彼はついさっき渡された私のチョコの包みを解く。
そして、まじまじとチョコを眺めてから、
パクッ
目を閉じながらそれを一口食べ、モゴモゴとゆっくり噛み砕いていく。
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