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すると、最初は嫌そうに口を動かしていた彼が、途中でパチッと目を開き、飲み込んでから、
「…おっ、普通に美味いじゃねぇか。
確かに甘ぇけど、それがあんまし気にならないくらいに苦味が効いてる。コレ、ホントにチョコか…?」
なんてことを言いつつ、一口、また一口と私のチョコを食べ続ける。
美味い…美味い、かぁ……
自分が作ったモノを、好きな男子(ひと)に『美味い』と言われながら食べて貰えることに、私は言葉にできない嬉しさを感じていた。
本当はこの嬉しさを表に出したくなったけど、そこは自分の中でグッ、と抑えつつ、
「フフッ、チョコにも色々種類があるのよ。
貴方にあげたそれはビターチョコレート、カカオがいっぱい入った大人のチョコなの。
どう? これなら問題ないかな…?」
冷静さを装いながら、私が作ったチョコについて話し、その是非を彼に尋ねる。
そんな私の問いに、彼はチョコ-ビターチョコ-を楽しそうな様子でパクつきながら、
「ああ…これならいくらでも食えるような気がするぜ……ふぅ、ごちそうさん。美味かったぜ、ミヤがくれたチョコは」
あっと言う間に私のあげたビターチョコを食べ終え、感想みたいな言葉を口にした。
美味かった…フフッ、美味かった、かぁ……
いくらカカオ分が多いとは言っても、私が渡したからと言っても…その姿を見るなりすぐさま捨てるようなチョコを、彼は食べる手を止めることなく完食し、『美味かった』とまで言ってくれた……
私は、それが無性に嬉しかった。
甘くても苦味があればいいと、好きな男子が好みそうな味の配分を試行錯誤しながら作ったことが、その一言で報われたって思えば、女の子なら誰だって嬉しく思うはずだわ。
「やったぁ!」
とか、普通の女の子ならすぐにこの場で言いそうよね。
でも、今の私はそうじゃない。
自分から積極的にアピールするんじゃなくて、彼が私を気にかけ、振り向くようになるまで…私は待つつもりだった。
だから、嬉しがる代わりに私はこう言ったの。
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