苦いけど、甘いモノ

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昨年の年末まで、『貴方のことが好きです』と想いを込め、贈られるのがバレンタインチョコだと分からなかった彼のこと、それ以外の意味があるのも多分知らないはずだ。 それを出せば、彼は簡単に納得する。私の想いを隠し通し、ここまでの関係を保つことができる… 今はまだ、気付かれる訳にはいかない。 彼には言葉を並べて得た答えじゃなくて、ちゃんと私のことを気にかけて、想いを膨らませて、私を好きになって欲しい… だから、ここで私にその気があると気付かせたくない。だから、この場では誤魔化し通したい。 そんな想いを胸に秘めながら、 「そうね。で、貴方は何が言いたいの…?」 言葉の先を彼に求める。 「バレンタインに贈るチョコは想いを伝えるチョコで、ミヤはそれを俺に渡したってことは、ミヤは俺のことを……」 そう言いかけた彼の言葉を、 「んもぅ、馬鹿ね。 チョコにも本命と義理の二種類があって、いつもありがとう、これからもよろしく、って意味合いとかを込めて贈るのが義理チョコなの。 もちろん、貴方に贈ったのは義理よ、義理。本気にしちゃダメよ」 私は即座に否定してみせる。 彼が何を言うかが予想できていたし、その答えも簡単に用意できたから、最後まで言わせないようにするのは容易だったわ。 普通の男子なら『本当にそうか?』みたいなことを聞き返してきそうだけど、こういうことをほとんど知らない彼はそうじゃない。バレンタインでさえも知らなかった程だから、私がこう言えばすぐに納得してくれるはずなの。 すると、私の言葉を聞いた彼は顔をしかめて、 「んだよ、バレンタインって面倒臭ぇな。本命か義理かなんて言わねぇで、好きなら好きだって正面切って堂々と伝えりゃあいいじゃねぇか」 少しばかりうざったそうな感じで言った。 …… 返す言葉が、すぐには出てこない。 好きなら好きと、正面から堂々と伝える… 恋愛事に疎い彼から出た言葉が私の心にグサリと突き刺さり、それが彼に対する想いを隠し通そうとすることに躊躇いを覚えさせたからだ。 誤魔化し通すか…それとも、話の流れに乗って想いを伝えるか……? 私の心は揺れ動き、相反する想いに挟まれて葛藤し始める。それが、返す言葉を口に出させてくれない。 どうしよう…どうすればいいの……?
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