どうしてなのかな…?

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朱兎達がここに来たのは、彼らの仲間になっていた栗色の妖精が事故に遭い、それを蔑まれたことへの報復の為ってことは聞いていたけど、肝心なことはヘッドにだけ耳打ちで語られていたから、聞きたくなるのも無理はない。 けど、私は大体のところでその理由に見当がついていた。恋する乙女の勘が、私に答えを教えてくれたの。 多分、栗色の妖精と私が抱く想いは同じはずなの。好きでもない男子の隣に、傍に居続けられる女子なんて、そう簡単にはいないって思ったからね。 そこで、私は朱兎にいくつか質問してから、彼がSoma's Crowを潰したいと思った理由を話してみせた。 結果は私の思った通り、朱兎と栗色の妖精は両思いの間柄にあったわ。まぁ、『プレゼントした指輪を左手の薬指に嵌めた』プロポーズまがいのことをしたって聞いた時は流石に驚いたけどね。 恋する人間は何でもしようとするし、何でもできる気になれる… 自分で言ったことなんだけど、朱兎の想いは私の考えを軽く上回っていた。 彼をそこまで行動させるだけの想いを抱かせた栗色の妖精に、嫉妬しなかったって言えば嘘になる。ううん、嫉妬だけじゃない…正直に言えば、私は彼女を羨ましくさえ思ったわ。 好きな男子(ひと)に好きだと想いを告げられ、想い続けていたことが叶った…羨ましく思わない訳がない。 朱兎にそんなに想われ、朱兎のことを想う彼女に、私は自分の姿を重ねて見ていた。私も、いつか彼とこうなりたい…女の子なら、誰でも夢見る憧れの状況だから、ね。 「プロポーズ? 指輪なんだから、指に嵌めるのは当たり前だろ?」 突然こんなことを言い出した彼に対し、私は思わずまくし立てた。誰かを好きな想いを持っている人なら知ってておかしくないのに、彼は全く知らなかったの。 ……呆れた。私の好きな男子(ひと)は、そんなことも知らなかったなんて、思ってなかったからね。 それでも、彼が恋愛事に疎いことを私は知った。きっかけは本当に偶然だったけど、彼のことをまた一つ、私は知ることができた。
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