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「ハァ…呆れた。そんなんだから、好意を寄せている女の子がいても気付かないのよ。
貴方、小学校じゃあ女子の間で結構人気あったのよ?バレンタインの前の日なんか、貴方にチョコを渡すんだっていう娘がいっぱいいたしね」
いつの間にか、私は今まで聞けずにいたことをちょっとだけ…そう、ちょっとだけ触れる程度のことを口にしていた。こういうの、『偶然の産物』って言うのかしらね。
「バレンタイン?何だよ、ソレ」
…再び呆れる私がいた。貴方がそこまで疎いなんて、流石の私でも考えつかなかったわ。
でも、あとひと押し、あとひと押しで私が欲しかった答えが見つかる……
その場の勢いと逸る心…この二つに逆らわず、私は更に言葉を向ける。
「貴方、それも知らないの!?
2月14日のバレンタインデー、女の子が好きな男の子にチョコを渡す日なのよ。『貴方のことが好きです』って想いを込めてチョコを渡すの。女の子にとっては一大イベントなのよ」
「あぁ、だからあの日はやたら女子がチョコを渡してきたり、下駄箱にチョコが入っていたのか。
でもな、俺はチョコが嫌いなんだよ。あんな甘ったるいの、渡されても困る。嫌いなモン渡されて喜ぶヤツがどこにいるんだよ?」
そっか、そうだったんだ……
ちょっとだけ、ホッとしている自分がいた。
でも、これでようやく納得できた。
綺麗な包み紙を開けて中身を見たら、そこから嫌いなモノが顔を見せる…嫌がらせのようなことをされて、「受け取れ」なんて言うのは無理な話よね。
それなら、彼がチョコをゴミ箱に捨てるのも当然だし、事情を知らない女子が泣くことになるのも当然の流れかもしれない。
だけど、私は敢えてこう言った。
「流石に捨てるのはやり過ぎ。次からは気をつけないとね」
「そうだな。バレンタインに渡されるモノの意味も分かったことだし、極力捨てないようにする」
欲しいものは、全て整った…
来年のバレンタインデー。今から楽しみで仕方がない、私がそこにいた。
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