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ふわりと無重力。
長い長い夢から目が覚めるような感覚。
瞼の裏に見えた光に、重い瞼をゆっくりと押し上げた。
目に映るものが何かと意識をするでもなく、ぼんやりと映る視界。
次第に自分の体がここにあって、柔らかなベッドの上だと知る。
ここはどこだろう?
私は…眠っていた?
体を起こそうとしても、力が入らない。
確かにここに意識はあるのに、指先も動かせていないように思う。
体が重くて持ち上がらない。
顔を横に向けることも不可能。
なんだろう?これ。
動かない体を不思議に思いながらも、どうすることもできず、どこか狭く思う視界の中を見る。
ここは私の家ではないはずだ。
それだけはわかる。
目に映るのは天井にある真っ白なシーリングライト。
少し下がったところには棚のようなものが見える。
病院でもなさそうだ。
私の耳は物音を聞こうとして。
規則正しい間隔で鳴る機械音ばかり聞く。
他の音はなにも聞こえない。
動かない体と機械音と天井のシーリングライトだけの中で、どれだけいたのか。
しばらくすると扉が開くような音が聞こえて、カチャカチャと金属がぶつかるような音がした。
人の気配。
声を出そうとしても、言葉にならなかった。
ここはどこですか?
ただ、それだけを聞きたかったのに。
それでも私が出した、あという声だけで、室内に入ってきた人は気がついてくれた。
私の視界にその人影がぼんやりと映る。
ぼやけていて、はっきりとは見えない。
男のように見える。
その人影はすぐに見えなくなった。
次に人の気配がしたときには人影が増えた。
聞きたいことはあるのに、私の言葉は言葉にならない。
一人の人影が私の瞼を指で押し広げて目に光を向けてくれて眩しい。
それをやめてほしくても声も出ないし、体も動かない。
ただ、少しするとその光は消えて、指は離れた。
「意識を戻したようです」
「そうですか」
「今暫くはこのまま起き上がれないでしょう」
二人の人影はそんな話をする。
「広田 小雪さん。まだ体も思うようには動かないでしょうが、大丈夫ですよ。あなたはここにいます。今はゆっくり眠ってください」
お医者さんのような気がする。
私は…ここにいる?
……ここはどこ?
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