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私の家は少し繁華街から遠い。
学校の近くにはなるのだけど、田舎かもしれない。
サルくんは家まで私を送ってくれようとしたけど、遠いからと私が遠慮して。
「次、バイトいつ休み?」
「たぶん水曜日。シフト見てからまた連絡していい?」
「うん。来月からシフト合わせて休もうか?」
そんな話を手を離せないまま話す。
あとで携帯で話せばいいとも思うけど、離れられなくて。
ドキドキ、ずっとしてるのは、お酒のせいじゃない。
家にきてもらってもいいかな、なんて思ったりもした。
でもそれはさすがに早すぎる気がする。
よって、なんとか気持ちを振り切って、今日はここでばいばい。
明日にはまた学校で会える。
ドキドキは落ち着かないまま。
暗い夜道を家に向かってまっすぐ歩く。
車も人もあまり通らない大きな道。
それなのに街灯がしっかりしていて明るい道。
学生が駅から学校にいくときには通学路になるからかもしれない。
まわりは公共施設も多い。
昼間には渋滞することもある道だからかもしれない。
今のこの遅い時間では静か。
浮かれた気持ちで、サルくんがカラオケで歌っていて覚えた歌を鼻唄で歌いながら、歩道をまっすぐに歩いていた。
車のヘッドライトの明かりが見える。
速度オーバーで飛ばしているのか、その明かりはすぐに近くなって。
え?
と思ったときには遅かった。
ブレーキの鋭い音。
私に向けられているヘッドライトの明かり。
走って逃げるとか、そんなこと考える余裕はどこにもなかった。
体にめり込む車のフロント。
弾き飛ばされて宙を舞った私の体。
どさりと道路の離れたところに落ちて転がった。
意識はあった。
なにが起こったのか、わからなかった。
端から見れば私は、まるで軽いマネキン人形のような動きで、何も抵抗できずに吹っ飛んだのだろう。
痛みがあるのかもわからない。
ただなにもわからなくて、体がアスファルトの地面に転がったまま起き上がれない。
全身が心臓になったかのように、ドクドクと大きな音をたてているような気がした。
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